よみモノ

環境にも歯にもやさしい。天然素材でブラシを作るカナヤブラシ産業さんへインタビュー
kanaya brush

_MG_9359

ーカナヤブラシ産業さんの成り立ちを教えて下さい。

まず、私のおじいさんが京都から東京へ出てきたんですね。浅草の方に大内刷毛(ハケ)店という店名で始めまして。すると少ししたら戦争になりまして。なので京都の金屋町というところへ子ども、親父もそうですけど疎開させて頂きました。
戦争が終わって東京に戻ってまた大内刷毛店をやっておりました。次に社名を変えようってことで疎開先のお世話になっていた金屋町の金屋をもらい金屋産業社に。
今度は時代に合わせてカタカナにしようと、その時に今のカナヤブラシ産業になりました。

それと小売の専門店ですね。刷子(ブラシ)に合ったようなと言うとやはり平仮名と漢字ってことで”かなや刷子”となりました。

ーブラシを作り始めた経緯を教えて下さい。

詳しくは聞いてないですけども、時代の流れですよね。家庭用で使うものが刷毛からブラシになってきたんですね。

刷毛は昔からあるじゃないですか、化粧をするためのものですね。ブラシっていうのは西洋文化です。それが日本に入ってきてこれからブラシが多くなるなってことで様々なブラシを作り始めました。

ー歯ブラシはいつ頃から作られているものですか。

歯ブラシは古いですよね。昔は馬毛の歯ブラシばかりでした。その内、化学繊維が出てきて低迷したんですね。低迷して馬毛の歯ブラシが無くなりかけたんだけど、カナヤブラシ産業が改めて馬毛をやっていこうってことで今まで続けてきた。
歴史の中で無くなる商品ってあるじゃないですか、化学繊維が出てきたように。でもまたリバイバルじゃないですけど良さが見直されていく。歯ブラシはそれが分かりやすかったのかもしれません。

_MG_9304

ーカナヤブラシ産業の歯ブラシは昔から毛が主流なんですね。

最初は馬毛だったと思いますね。強い、減らない、綺麗な化学繊維が出てきて、そっちが便利だから化学繊維のものが多くなってきましたけど。一方で私たちの考えでは昔からある天然素材の良さ、体に優しい、自然に優しいというのを改めて皆さんに見直して欲しいということで始めたんですね。

その中で代表なのが馬毛の歯ブラシです。今は馬毛、豚毛ですね。ただ、馬のたてがみと尾っぽの毛では硬さが違うんですね。胴の毛もまた違いますし。毛に特徴があり、それぞれにあった用途のブラシを作るってことなんですね。

お客様でよく「毛は何が一番いいの」って聞かれていく方がいらっしゃいます。何がいいではなくて、なにがその使用用途に合ってるのってことなんです。いくら尾っぽの毛がいいものだとしても、柔らかいブラシが欲しい人には合わないですよね。歯ブラシのように硬いのは馬の尾っぽの毛、最近店頭に並んでいる歯茎用歯ブラシは柔らかい馬のたてがみを使っています。豚毛はボディブラシになったり、猪毛は他の毛に比べてとても硬いのでヘアブラシなどに使われています。

ー最も人気のある商品は、やはり歯ブラシですか。

そうですね、歯ブラシです。他は毛玉取りブラシ、あとはヘアブラシですかね。ヘアブラシも天然木に猪毛か豚毛を植えています。そうすると天然のものなので使っているうちに減りますよね。すると数年後に「これだけ減ったよー」って持ってきて、同じブラシを買いにくるお客さんもいらっしゃいますよ。

そんなに減るまで大事に使っていただいて、と思うんですけどね。その時、天然の良さが見られます。体に馴染む感じが目に見えるのがいいですよね。天然のいいところ、良さでお客さんには喜んでいただいています。

ー化学繊維の商品はありませんか?

いえ、化学繊維の商品も作ってます。お客様から頼まれればプラスチックの台にプラスチックの毛を植えたりもしますけども。だけど、お客さんもやはり木に天然素材が良いってお客さんが増えてきたので馬毛の歯ブラシのような天然素材を使ったブラシがメインですね。

ー例えば歯ブラシなんですけど、生産工程はどのようなものになりますか?

まずは原毛があり整毛されて、消毒までされているものを仕入れますね。次にそれを検品します。それから機械で植えています。

職人さんが柔らかい毛、硬い毛を組み合わせます。その後、機械で均等に混ぜます。

商品に使う毛の硬さを丁度いいものにするのと、コシを出すためですね。あと、余分な毛を取り除いたりとか。

ー職人さんはどの程度の年数されている方ですか。

うちは長いので40年くらいですか。
高齢で辞めていった方もいらっしゃいますね。

_MG_9439

ーどういった方々がブラシの製作に携わっていますか。

うちの職人、社員ですね。去年新人が5人入りました。
みんな頑張り屋さんで将来が楽しみです。

ー製造は全て日本で?

そうですね。
どこの業界もそうですけど、商品がよく売れるようになると、安く作ろうと製造を外国に持って行かれる方が多いですよね。うちはなるべくそうしないで日本の職人さんを大事にしようっていう。もちろんコストは高くなりますけどね。コストが高くても売れる物を考え、作る。それがカナヤの役目ですね。
私どもの考えではお客さん、仕入先、下請けさんがいる。もちろんお客さんは大事ですよ。でも職人さんがいて、仕入先がいて、材料をうちに売ってくれるから品物が提供できるんですね。なのでどれが大事ではなくて両方を大事にしていくんですね。それで今のかなや刷子があると思っています。

どうしても無理をしないといけない時があれば仕入先、職人さんも無理を聞いてくれます。カナヤブラシ産業さんの為だったらやってあげようという職人さんも多分いらっしゃると思います。うちらもそうですよね。お客さんがいて、良くしていただいたら困ったときに助けてあげようって思いますよね。

そこを外国へ製造を移して、さあどうしようってなったときに助けてくれるかというと違いますよね。やはり昔から大事にしてくれた方が私どももありがたいですし。

ー身近な支えを大事にされていると。

化学繊維のブラシと比べたら値は張りますけどね。高くてもうちのブラシの方がいいっていうお客さんがいらっしゃるのは本当にありがたいです。いい仕入れがあって、いい職人さんがいて、いい工場の社員がいて、いいお客さんがいらっしゃるってこと。本当に感謝だよね。

"馬毛の歯ブラシ"についてこんな記事も

  • モノ

    馬毛の歯ブラシkanaya brush

    使っているうちに体になじむ、そんな歯ブラシをご紹介します。

    もっと読む