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日本でここだけ!有機JAS認定を受けた梅干しをみんなへ。優しい梅屋さんへインタビュー
Make Organic Plum Natal

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深見 優
1983年 和歌山県生まれ / 有機梅干し専門店(通販) やさしい梅屋さん店主
子どもが生まれたのをきっかけに有機梅の栽培に力を入れ、日本で唯一有機JAS認定を受けた調味梅干しの製造に成功。
夢は生まれ育った、故郷の『紀州 口熊野』を有機梅の郷にすること。

有機梅干し専門店 やさしい梅屋さん
ウェブサイト:http://www.yasashi-umeya.jp/

一般社団法人日本有機梅協会
ウェブサイト:http://www.yukiume.jp/

ー本日は宜しくお願いします。

こちらこそ。お願いします。

ー早速ですが有機の梅干しを作っているということで、そもそもなぜ梅干しを作っているのか、有機栽培を始めたのか、教えていただけますか。

そうですね。まず、ここ和歌山県が梅の産地だったというのもありますが、祖父が梅干し業を始めたのが今も続いています。有機栽培を始めたのは結婚して子どもが出来たのがきっかけだと思いますね。奥さんがよく食べていた梅干しは、スーパーに売ってあるような梅干しだったんですけど、裏ばりに原材料表記ってあるじゃないですが、それを見るとカタカナ、横文字が多くて何なのか分からないですよね。色々な物が入ってるなと思いました。化学添加物が悪いということではなく、梅干しを食べてくださる方の選択肢として、化学添加物が入っていない梅干しがあってもいいのでは?ないのであれば自分で作るしかない。そういった思いから作り始めました。

また、無農薬、無肥料で梅を育てることができる環境があったのが始める大きな理由になりましたね。元々畑はあったんですけど梅農家ではなく、梅干しの加工業者でしたので畑を手入れする事がなかったんですね。

そんな中で、あるとき社長が畑を見に行ったら、農薬も肥料も与えていないほったらかしの畑に良い梅が出来ていて、それを見てしっかり手入れしてみようかって。手入れをしていなかった長い間に自然の循環サイクルができていたんです。畑自体が山のてっぺん近くで、周りは雑木林に覆われている。大きいクモ、ムカデ、イノシシなんかも出てきます。言えば自然の要塞じゃないですけど、外部の空気から守られている。

そんな状態だったので有機栽培を始められた、というのもあると思います。

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ー自然の要塞ですか、たしかに周りが森に囲まれてますよね。そんな自然の中で作られる有機梅、有機梅干しの特徴ってなんですか。

やっぱり安心して食べられることですよね。 子どもさんや、妊婦さんが安心して食べられること。 僕の奥さんが妊娠した時に、市販されている梅干しのアルコールだったりが臭くて食べられないって事があったんですが、有機の梅干しを食べさせたら雑味がなくておいしいと言ってくれて。 すごく嬉しかったですね。

あと、このまえ断食されているお客さんから注文がありました。 今断食ブームなんですけど、梅干しは塩分補給って理由で断食中でも食べていいんですって。 梅湯流しと言って、梅を溶かしたお湯を飲んで、野菜食べて体の中の老廃物を全部だしてリセットするというのがありまして。 梅湯流しに使う梅は3年熟成、無農薬無肥料が良いらしく、そういった梅を探されていたお客様から「ドンピシャおたくですー」と。 まさかそこに需要があるとは思っていませんでした。

梅干しは昔から日本にある民間療法の1つじゃないですけど薬的な部分もあったので、 そういう意味もあっておたくの梅干しを「1日1粒食べてるんやー」という方もいらっしゃいますね。

うちは農薬など様々な検査をしていることもあり、安心という面で病気されている方、体に気を使っている方に食べていただいてます。

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ー3年熟成の梅干しがあるんですね。

ありますね。毎年多くは作っていないので数個限定になってしまいますが。

有機で梅を作ろうと思うと、そもそもの収穫量が少ないんですよね。その少ない中から7割を収穫して3割を自然へ返したりするのでやっぱり少ない。

その少ない中から梅干しと、3年熟成させる梅干しに分けるので更に少なくなってしまいますね。

ー有機だから難しいところなんですね。他に有機で梅干しを作るにあたって難しいところなどありますか。

そうですね、やっぱり色々な制約がある事ですね。

本当に昔ながらの梅干しというのは梅と塩だけなんですよ、シソも入ってないんですね。うちで作っている減塩タイプの梅干しには、うす塩味と、甘口味があるんですけど、有機の認証を取る上で保存料、アルコール、化学調味料を一切使えないんですよね。使う材料も全て有機素材じゃないと駄目なんですよ。

ー減塩となると投入する塩の量が違うだけではなく?

ちがいますね。基本はしょっぱい梅を作るんですよ。このしょっぱい梅を食べ易い様に工夫するというか、塩分を下げるということをしないといけないんですね。

最初しょっぱい梅を水につけて塩抜きするんですけど、それをしてしまうと梅の持っている栄養成分が抜けてしまうんですね。

それはあまりにも、もったいないじゃないですか。うちはしょっぱい梅を塩抜きするときに冷水、お湯につけるってことをしなくて。その代わりに有機素材の調味料で時間を掛けて塩分を下げるので、酸味だったり塩っけというのが多少ある。それは栄養成分が残ってるって事なんですけど、普段食べている梅干しと違う感じがすると思います。

ー深見梅店さん独自の減塩方法だから、梅の栄養成分が損なわれないと。

商品にするまでが難しい所でもありますが。有機だからってところを見ると常温保存ができることも強みでしょうか。

ー常温保存ですか、

日本の昔からあるものって常温保存でいいんですよ。糠床、浅漬けなんかもそうですよね。

梅干しって冷蔵の技術が無い時代にあった食べ物なので常温保存でも大丈夫なんです。冷蔵庫の中へ入れても問題はないんですけど、食卓のテーブルに置いても大丈夫。

枯れていくっていうイメージ。「本当にこれオーガニックなの??」って、知り合いの方が実験していて枯れてたんですね、腐ってなかった。「これすごいよー」って。僕も「凄いですねー」と。

ー常温って何度くらいまで大丈夫なんですか?

夏場も大丈夫ですね。

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ー夏場もやはり枯れていくんでしょうね。そんな有機梅干しですけど、認証付きで作っているのは深見梅店さんだけなんですよね。有機で作る農家さんが増えてほしいなって思います?

思ってます。有機梅干しに関して、地域上げて取り組みたいっていうのが夢なので。近くに世界遺産の熊野古道があるんですけど、この紀州、口熊野をオーガニックの梅の郷にするっていうのが大きな夢です。

未来の子ども達のためにも、食べる人にも、栽培する人にも、環境にもやさしい梅を残したいですし、より多くの人にこんな梅干しがあるってことを知ってもらいたいんです。

梅干しって日本に昔からある保存食品ですよね。日本を象徴する食文化の1つでもあると思うので、生産者である僕らがきちっと守って、次の世代にどう伝えるのかってことを今僕らが考えないといけないことなんじゃないかなと思います。

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